司法書士の仕事

不動産登記

土地や建物の物理的状況と権利関係を、法務局が管理する登記簿に公示する不動産登記制度は、所有権等の権利に対抗力を付与し、保護を図るとともに、これを一般に公開することにより、権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし、不動産取引の安全と円滑を図る制度です。司法書士は、土地や建物に関する権利について、依頼を受けて、依頼者の代わりに登記手続を行う仕事をしています。登記手続には、例えば、次のようなものがあります。

  • 土地を売買または贈与したときの所有権移転登記
  • 土地や建物を相続したときの所有権移転登記
  • 建物を建てたときの所有権保存登記
  • 銀行でローンを組んでお金を借りたときの抵当権設定登記
  • 銀行のローンを返済したときの抵当権抹消登記

司法書士は、登記手続を行うにあたり、「人・物・意思」の確認を慎重に行った上で正しい登記を実現することにより、不動産取引の安全と、土地や建物の権利を守る役割を担っています。

商業登記

商業・法人登記の信頼性を保つため、新たに会社・法人を設立したり、登記事項(本店、事業目的、資本金の額、役員等)に変更が生じた場合には、その旨の登記を法務局へ申請しなければなりません。司法書士はこれら登記手続きについて、登記申請に必要な議事録などの書類を作成し、依頼者を代理して登記申請手続を行います。また、司法書士は会社法の専門家として、例えば会社の設立に際しては、手続きの流れの説明にとどまらず、会社の種類や定款の内容といった詳細な部分の助言をすることができますし、会社設立後においても企業法務や組織再編、事業承継など多様な分野において相談に応じることができます。会社に関係する法律は、社会の変化に合わせるように相次いで改正がなされており、コンプライアンスの重要性が高くなっています。このように、司法書士は、商業・法人登記の申請手続や企業法務の専門家として、会社を巡る取引の安全を実現する制度を支える、大切な仕事を行っています。

債務整理

消費者金融やクレジット会社などから借入れや、住宅ローンの返済などで、自分の収入では返済できないほどに債務(借金)が膨らんでしまった状態を多重債務状態といいます。
その多重債務を法的手段によって整理し、これからの生活再建のお手伝いをする手続が債務整理です。
債務整理手続には任意整理、特定調停、個人再生、個人破産という手続があります。
手続は収入、負債状況、借入の経緯などによって異なりますので、専門家に相談ください。

任意整理

裁判所の手続によらないで、弁護士や司法書士が代理人となって、支払額や支払期間などについて各債権者と直接交渉する方法です。債務を、おおよそ3年から5年で返済していきます。

特定調停

裁判所の手続です。裁判所に調停を申し立て、裁判所の調停委員が間に入って、支払額や支払期間などについて話し合う手続です。任意整理と同じく、債務をおおよそ3年から5年で返済していきます。

個人再生

総債務額が5000万円以下の個人債務者で、かつ、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある方が、裁判所に申立てることによって原則として3年間(事情によっては5年まで延長可)、一定額を弁済すれば、残額の免除が受けられる手続きです。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すれば、住宅ローンの返済額は減りませんが、住宅を手放さずに手続を進めていくことができます。
最低返済額のおよその目安としては、借金の総額(住宅ローンを除く)に応じて次のとおりです。

借金の総額最低返済額
100万円未満借金の総額全部
100万円以上500万円以下100万円
500万円を超え1500万円以下借金の総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下300万円
3000万円を超え5000万円以下借金の総額の10分の1

自己破産

自分が持っている財産(不動産・自動車等)を換価して、借金の額の割り合いに応じて債権者に分配します。支払えなかった部分は免責許可を受けることにより、支払が免除されるという手続です。

財産的価値のある物を持っていない場合は、換価、分配という手続きは行われません。
破産で注意しないといけないことは、「免責不許可事由」というものがあることです。
例えば、借金がギャンブルや浪費でできたものである場合等には免責の許可が下りない可能性があります。
ただし、滞納税金や不法行為に基づく損害賠償請求債務などは免責の対象とはなりませんので、免責決定を受けたあとも支払わなければなりません。
なお、破産と聞くと、選挙権がなくなるとか、住民票や戸籍に記載されるなど思われるかもしれませんが、そのようなことはありません。

家事問題

準備中

一般民事

自然人(一般の方)間のトラブルに関する事件を民事事件(特に一般民事事件)といいます。分かりやすい事例としては、交通事故、労働関係トラブル、近隣トラブル、不動産賃貸トラブルなどです。刑事事件や行政事件などは一般民事事件に含まれません。

一般民事事件が起こった場合、当事者同士の話し合いで済めば一番良いのですが、感情的になっていたり、納得がいかない状態での当事者同士の話し合いではうまくいかないことも多いと思います。この事件を解決するために訴訟制度、労働審判などがあり、調停や和解を含む裁判外紛争解決手続(ADR)と呼ばれる方法も選択することができます。

その事件の特質に合わせてどの手段が一番有効なのかは異なるため、専門家にご相談ください。

訴訟

裁判による紛争解決の手段です。権利関係がはっきりする等のメリットはありますが、費用と労力と時間がかかるのがデメリットです。司法書士は簡易裁判所における代理権を認められており、訴訟額140万円以下の案件について代理する権限を与えられています。

少額訴訟

60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟です。メリットは基本的に1回の期日で終わり、簡単で訴訟費用が抑えられることです。デメリットは60万円までしか請求できないこと、金銭債権の請求のみにしか使えないこと等があります。

労働審判

労使間の間のトラブルを解決するために労働審判員が解決策をあっせんすることにより迅速な紛争解決を目的とする方法です。第3期日までなのでスピーディな解決を望めます。

調停

調停委員に促されて当事者同士が話し合いによってお互いに譲歩することで解決する道を探す方法です。話し合いが必要なため、長い時間を要することになる可能性があります。費用は安いです。

和解

裁判上でも裁判外でも自由に行うことができる、当事者同士の話し合いによって解決を図る方法です。和解調書、調停調書はともに判決と同じ効力を持ちます。

仲裁

第三者である仲裁人の仲裁案を受け入れることで成立する解決方法です。仲裁案には強制力があります。仲裁を始めるためには当事者双方の同意が必要です。

成年後見

認知症、知的障がい、精神障がいなどの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護などのサービスに関する契約を結んだり、遺産分割の協議をする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。

成年後見制度は、大きく分けると「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。法定後見制度は、本人の判断能力の程度などに応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。法定後見制度では、家庭裁判所から選任された成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約等の法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。